最近SSD(solid state drive)の業界で3D NANDという言葉をよく耳にするようになりました。(実際にはもう少し前から注目されていたようです)
強引にまとめると「SSDの革新的な技術が導入され、大容量(1T~16TByte)のSSDが製品としても出回るようになってくるため、SSD全体の価格が下がり利用しやすくなる!」といったところでしょうか。
非常に高額だったSSDが今後は更に手軽に利用できるようになる事が予想されるので、2015年の現状から1年後くらいを見据えてSSDとHDDをどのように利用するのが良いのかを個人的に考察してみました。
その前に脱線で3D NAND(3D NANDフラッシュメモリ)についてほんの少しだけ、ざっくりとまとめてみる事にしました。(実際には専門用語の頻発する話になってしまうため正確には間違った部分があるかも知れません)
○ 用語解説
SSD: SSDとはフラッシュメモリを使用した記憶装置で、従来のHDD(ハードディスクドライブ)に台頭してきたものという認識で良いでしょう。
HDDに比べ低電力、高速アクセス、耐衝撃性が特徴ですがデメリットも存在します。
○ 3D NAND 技術開発の背景
今まで: チップ内にどれだけ多くのトランジスタの数を搭載できるか = 微細化(小さくする)が性能に直結していたため、チップには平面上(2次元)に敷き詰めるので、性能を上げるためにはトランジスタの微細化が必要でした。
2015年8月時点ではトランジスタ1個の構成する寸法は16nm(ナノメートル: 10のマイナス9乗で、 0.000016 ミリメートル )ほどで、これは細菌よりはるかに小さく、ウィルスに近いとても小さな大きさです。
これから: これ以上の微細化は物理的に限界に近く、またコストに合わないので、チップ上に平面に配置するのではなく立体的(3次元)に積層する事で、1つのチップ上により多くのトランジスタを搭載する事を可能とする技術を開発
おおよそ現状では24層、32層、48層、64層あたりが製品化される最先端かと思われます(=これまでと同じ大きさで24~64倍?の容量が確保できる)
これはSSD業界に革命が起きたと表現しても十分すぎる新しい風ですね。
※ とても大ざっぱな説明で正確ではない可能性がありますことご了承ください
・ 参考
サクセスインターナショナル株式会社:寄稿「メモリの大革命 3次元NANDフラッシュ」
実際に3D NAND の技術が注目され始めたのは数年前になるのですが、今年(2015年)になってから具体的な製品が登場してきました!
今まではSSDと言えば500GByteもあればSSDではかなりの大容量でしたが、3D NANDフラッシュにより1TByteや2TByteに留まらずそれ以上の容量を実現する事ができるようになりました。
最新のニュースでは一週間ほど前に16TB(16000ギガバイト)のSSDが発売予定との発表があります。
・ 参考
PC-Watch さんのページへ(Samsungが256G-bitの3D NANDチップで16TBのSSDを実現)
16TByte とは凄いですね!!
さすがに使い切れる気がしません!
では、具体的にユーザとしての運用を考えてみましょう
SSDとHDDの運用方法を考える
まず、SSDとHDDを簡単な表で比較してみることにします。
HDD | SSD | |
価格 | 安い | 高い(5倍前後) → 少しずつ安くなる |
アクセス速度 | 遅い | 速い(2~4倍くらい?) |
データ容量 | 多い(4倍くらい) | 少ない |
消費電力 | 多い(3倍くらい) | 少ない |
寿命 | - | 同じくらいか??? |
注意点 | 発熱に注意 (HDDの温度が高くなる) |
長期間の放置に注意 データが消える |
※ 細かく見ると比較する要素はもっと多く、また具体的な数字は環境によっても大きく変わり、主観的な要素も含む値ですので参考程度にしてください
価格について
一番気になるのがお値段。
今は同じデータ容量ではHDDの5倍以上になる場合も少なくないため、導入するにはちょっと躊躇してしまう価格です。
Windows をインストールすのにお勧めするのは250GByte~500GByteのストレージとなりますが、容量別で価格を比較していきます。
60GByte: SSD 希少、 HDD 希少 → 選ぶべきでない
128GByte: SSD 7000円、HDD 希少
250GByte: SSD 12000円、HDD 希少
500GByte: SSD 22000円~、HDD 5000円~
1T Byte : SSD 45000円~、HDD 5600円~
2T Byte: ー(価格高騰、希少)、HDD 7200円~
3T Byte: -、HDD 9800円~
※ 2015年8月の時点で、容量、価格共に数字はおおよその値です
実際には価格だけでなく性能をしっかり見る必要があるので、数字よりも高額になる事を想定しましょう
参考までに、最近のWindows はいろいろ特別な設定をしない限り非常に容量を占有してしまうので、システムディスクで使う場合でも250GB くらいは欲しい所なのですが、250GBのSSD は安くなったとはいえ 1万円以上になるため容量の割りにはなかなかに高額です。
HDDが本領を発揮してくるのは1TByte以上の容量の場合で、容量が大きくなるほどSSDとの価格差は10倍以上にも開いてきます。
SSDの価格はちょうど今くらいから 3D NANDフラッシュのSSDが製品として登場してくるため、大容量のSSDをはじめ、全体的にまだまだ価格が下がってくる事が容易に予想されますので、また来年には違った結論が出るかもしれません。
アクセス速度について
SSDの最大の魅力は何といっても快適なアクセス速度!
スマートフォンなどもSSDと近いものと考えて良いかなと思います。
特殊な用途でない限りは基本的にOSをインストールするシステムディスクとして利用する事で、起動をはじめ様々な場面で高速化されて動作が快適になります。
※ HDDも種類により高速化されているタイプのものもあるので、場合によってはそこまで速度の差がでないかもしれません
データ容量について
私はWindows7 Pro(x64) を 60GByte のSSDで運用していたのですが、最初は余裕のあった空き容量もいつしかWindows系ファイルが肥大化していき、60GByteでは全然足りない状況に陥りました。
私的なデータを含めないとしても、100GByteで運用したところで状況はマシになる程度でしかないので、OSをインストールするシステムドライブ(Cドライブ)は200GByte 以上をお勧めします。
ディスクの容量と寿命にも関係するのですが、データを容量いっぱいに入れて運用すると速度低下を招いたりディスクの寿命が短くなる可能性が高いので、空き容量は常に30%は、可能であれば50%は空けておいた方が良いのも250GByte以上のディスクをお勧めする理由の1つです。
250GByte の場合は通常時は120~130GByte程度に収まるように気をつけた方が良いでしょう。
※ バックアップなどでデータ保存のみに利用するような特殊な使い方をする場合はもう少し空き容量が少なくても問題ありません
消費電力について
意外と重要なのが消費電力。
いえいえ、電気代の話ではなく発熱の問題です。
HDDは熱に弱いので、なるべく涼しい環境で動作させてあげたいところです。
SSDもHDDより熱に耐性があるとはいっても、熱に強いわけではなく寿命や放電に影響しますので温度管理は重要です。
消費電力が大きい=発熱量が多い ので、消費電力が少ない方が熱くなり難いので、SSDはHDDよりも低温で良い環境で運用がしやすいのです。
HDDは物理的に回転させるためどうしても電力を消費してしまうのに対し、SSDは電気的にアクセスするため消費電力が低く抑えられています(HDDの1/3程度)。
消費電力が多めのHDDでデータのコピーなど長時間動かすと、夏場だと平気で50℃、60℃にも温度が上がってしまいがちですが、60℃を超えるとHDDにとってはかなり厳しい環境で、そんな状況で使っていてはいつ壊れてもおかしくないかもしれません。
今は省電力で安定性のあるとても優秀なHDDも出てきているので、よく調べて選むように注意する必要があります。
後でお勧めのHDDも紹介しますのでご参考にしていただければと思います。
寿命について
寿命についてはなかなか捉えるのが難しい題材となってしまうため、経験や感覚を主体にまとめてみたいと思います。
SSDは登場初期は書き換えの回数に制限があり寿命が短いと言われていて、また実際に寿命は短いものでしたが、最近では数十年は利用できると言われるほどにその課題を解決してきました。
しかしながら、よく議論されている○十年使っても大丈夫というのは単純な書き込み回数での話。
今売られているくらい大容量になれば、よほど大量のデータを毎日読み書きしない限りは書き込み回数の制限に到達する事はないでしょう。
では何が問題になるかというと、CDやDVD、Bru-rayにも寿命があるように、SSDやHDDにも物理的な寿命があります。
SSDは登場してまだ歴史も浅いため具体的な数字は不明ですが、日常的に利用する場合はSSDは7~8年、HDDは5年程度だと思われます。
ただし、SSDは進行形で劇的に変化している最中のため、古いものやこれから出てくる新しいタイプのSSDに当てはまる訳ではありません。
古いSSDは上記より短く、新しく出てくるものは今よりも耐久性が上がるかもしれません。
※ HDDの場合、ディスク以外にコントローラー等のどこかの部品が壊れてしまっただけである意味寿命を迎えたという事になります(修理は可能です)。また、高耐久なものであれば飛躍的に寿命は延びます
しかしながらそれほど頻繁には利用しない場合、長期で保存する場合は話が変わってきます。
SSDでは絶縁体として利用されている酸化膜の経年劣化などで寿命があるようで、HDDのディスクに比べると壊れやすいようです。
この酸化膜の寿命は書き換えを行う際にどうしても劣化を伴ってしまうものですが、使わないからといって劣化しないわけではないようです。
また、SSDの場合はデータを電気的に保存するため、電源を入れずに長期間放置すると自然放電によりデータが失われてしまうようです。
10年程度と言われていますが、SSDでは保管する温度によりその寿命は大きく変わります。
一般的に、5℃ 温度が上がるだけで寿命は半減するようで、30℃の環境ではかなり短い期間でデータが飛んでしまうようです。
・ 参考
Gizmodeさんの記事:SSDは高温で放置するとデータが消える。早いものは数日で
HDDで長期保存する場合は数年に1度電気を通して軽く使うだけで良いようで(ベアリングのオイルを維持するため)、温度や湿度さえ気をつければ50年でも余裕だそうです。
・ 参考
lifehackar さんの記事:ハードドライブの平均寿命は? 使わなければいつまでも壊れない?
CDやDVD、Blu-rayよりも長持ちしますね、とても優秀です!
何らかの原因でデータが飛んだりディスクが破損してしまった場合、ケースバイケースではあるでしょうがデータ復旧は SSDの方が難しいようです。
それぞれの注意点
先にも触れていますが、SSD、HDDを利用する上で注意点があります。
・ SSDを利用する上での注意点
電源を入れずに長期間放置するとデータが失われる可能性がある
寿命を延ばすための運用方法がある(適度な空き容量を常に確保する、ハイバネーションを切る)
Trim機能など設定によりアクセス速度や寿命が変わるため適切に設定・運用を行う
適度に電源を入れるようにする
壊れる時は前触れもなく壊れるので重要なデータはバックアップをとっておく(異常を感じにくいので事前に気付かない事が多い)
静電気が発生しないようにする
・ HDDを利用する上での注意点
動作中に振動させない
発熱し過ぎないように温度管理を行う(40度以下が好ましい)
電源のオン・オフを頻発すると寿命が縮むのでこまめに電源の切り替えをしない方が良い(一日数回程度なら全然問題ない)
・ 共通の注意点
同時アクセスを避ける(コピー動作に別のファイルをコピーするなど)
お勧めの運用方法
特徴や注意点など基本的な事は抑えたので、実際に個人的なお勧め構成を紹介します。
○ 前提条件
・ 外付けは使用しない(x外付けHDD、x外付けSSD)
・ デスクトップ型、或いは振動が起きない環境での運用
・ データ容量がそれなりに必要(1TByteなどの容量が欲しい)
・ パソコン(マザーボード)が比較的新しい
※ 古いと規格が合わなかったり、内部バスの転送速度が遅かったりするので古いならせっかくなので新しいものに変えた方が良い
・ ディスクを2台以上で構成する
・ SSDの容量や価格がすぐに劇的に変わる事がない(緩やかに価格が安くなり、容量が増えていく)
○ お勧めの構成
OS・システム用 ドライブ: 250~500 GByte SSD
データ専用ドライブ: 2TByte HDD
~ 消えてはいけない重要なデータを扱う場合、またはパソコンに余裕がある場合 ~
データバックアップ専用ドライブ: 2TByte HDD
※ バックアップ専用の別のパソコン等に2TByteのHDDを搭載し、定期的にバックアップする
このHDD、またHDDがあるPCは日常的には利用しないようにする
ディスクを2台構成にした理由は、1台だけの運用ではトラブル時にリカバリーが非常に大変になり、3台以上では全てのディスクが同時に消耗していく上に、運用時の温度が若干高くなり環境が落ちるためです。
2017年くらいになればシステム用のSSDとデータ保存用のSSD(大容量)として両方SSDで運用し、データバックアップ用としてHDDを使う構成がお勧めになっているかもしれません。
ここで、HDDは耐久性能が非常に良い優秀なものがあり、若干高額になりますがWESTERN DIGITALのREDラベルをお勧めします。
HDDを詳しく見ていくとまたまたとても専門的な内容になっていくので触れない事にしますが、
システムドライブとしての利用は想定していないため、SSDのように速度が求められる用途ではなくデータ保存用としての選択で、このREDラベルは他のラベルより長期で利用するのに向いているものと思われます。
・ WESTERN DIGITAL RED(WD20EFRX) 2TByte
・ WESTERN DIGITAL RED(WD30EFRX) 3TByte
上の種類はとても省電力にもなっているので、安価な他のHDDと比べると寿命に結構違いがでそうな感じです。
私自身、REDラベルが登場してから早速導入して何年も運用していますが、それまでのHDDと比べると静音性や発熱の面でとても良くなっています。
※ 他社製品でも改良を加えている製品はもちろん存在しています
データ容量に対するコストは3TByteの方がお得ですが、1TByteも使う事がなければ特に必要ないでしょう。
3TByte 以上の容量は Windows XPでは認識できないのでご注意ください。
4TByte 以上になると容量単価が上がってしまうので、今は2~3TByte が良さそうです。
1TByte にしても価格はそこまで下がらないので、多すぎて余ってしまうと思いますが2TByteがお勧めです。
SSDについては暫くの間は日進月歩で、すぐにまた高性能な製品が出てくる事が予想されますが、恐らく価格面でも性能面でも緩やかにお手頃になってくるので必要になったタイミングでそれなりのものを購入するのがベストでしょう。
128GByte では、上述した通り容量的に心もとないので、SSDは250GByteと500GByteのSSDをピックアップしてみる事にしました。
SSDはもともとが高速なので読み書きの速度(ベンチマーク)よりも、安定性、耐久性、品質が良さそうでお手頃そうなものを1つずつ選んでいます。
ちなみに、オンラインの3Dゲームなどをプレイされる方はSSD が快適なようですので容量は余裕のあるタイプを選びましょう。
・ Crucial 250GByte(CT250MX200SSD1)
・ Crucial 500GByte(CT500MX200SSD1)
MX200 と、200番がついている方を選択してください。
MX100 と似ていますが、200の方がハイグレード版となります。
価格的にはSanDiskのメーカーの製品の方が若干安く抑えられるかもしれません。
・ SanDisk 240GByte (SDSSDA-240G-J25)
SanDiskの製品はコストパフォーマンスが良いお手頃で導入しやすいSSDですね。
以上でSSDとHDDの選択は完了となりますが、実際の運用ではOSやソフトウェアでの設定がとても重要となります。
Windows10のパッケージ版ももうすぐ発売されるようなので、その辺りも交えつつSSDやHDDに優しく快適な設定なども今度まとめてみたいと思います。